一昨日、久しぶりに大学時代の先輩と電話をした。
私が九州の大学に通っていたころに知り合って、そこから特別仲良くもならなければ疎遠にもならず、なんとなく縁が続いている男性の先輩だ。
職を紹介してくれるということで、ちょうど転職を考えている時期であり、話を聞いてみることにしたのだ。
ふとした話の流れで、その先輩が
「この世界に、本気で男女平等を望んでる人間なんていないでしょ。」
と言って笑った。
九州出身の男性はかなりド直球にこういう発言をする。
私たちの世代はたいてい、世の様々な差別問題に関して、
たとえ本質的なことを理解していなくとも、どこかマズそうであることは理解していて、
建前を取り繕う程度はするものだ。
しかし、彼らはそれすらしない。その上、怒れる女性には物理的な力で勝てることを仄めかして、黙らせようとさえする。
私も友人であるはずの男性に”口答え”をして、謝るまで床と壁を殴られたことがある。
この先輩にも、お遊びとは言え、酔っぱらっているときにタオルで腕を縛られたっけ。
九州、と地名をだしてしまうと地域差別だという人もいるけれど、
他県で生まれ育った私からすると、「(他の地域と比べて)九州には男尊女卑の風土が根強く残っている」という言葉はかなり実感を伴って腑に落ちている。
その証明のように、仲の良かった女性の同級生たちは、卒業後1人残らず九州を離れた。
「女を見下してる。優しくするってそういうことじゃん。」
女性の私にその言葉を投げつける暴力性の高さを理解できないことに呆然としてしまった。
しかしクラクラする頭を支えながら、ちょっと深堀って、話を聞いてみた。
そうすることがアラサーである私の、次の世代への社会的責任だと思っているから。
話を合わせて笑って、いずれ若い世代の使用者となり得る彼らの差別意識を醸成することに加担してはいけない。
話を聞けば、やはり彼の言う男女不平等は「男は強く、女はか弱いので、男は女を守り、優しくしてあげなければならない」レベルの理解に留まっている様子。
すなわち、無知の産物なのである。
「今、令和で、私たちまだアラサーなんですけど、マジか」と愕然とする。
近年フェミニストたちが声を上げている内容なんて、彼にとっては他国の侵略戦争よりもはるか遠くのもののようだ。
こういう場面で、自分が一番関心のある問題点にフォーカスしても話は聞いてもらえない。そこで、その人が聞いてくれそうな、政治的な視点から事例を出して言葉を尽くし、意思決定層に女性がいないことで招かれている不平等を話したのだが、
「そんなん立候補しない女が悪い!」
とまた笑って言われて終わってしまった。
もう疲れてしまって、それ以上私も何も言えなかった。
女性がなぜ立候補までたどり着けないのか、そこがそもそも男女不平等の産物なのに、そこすら説明しなければわからないほど、見えていないのだ。
入試で不当に点数を引かれないなら、優しくなんかしてもらわなくていい。
家庭・社会における男女の責任が半分こされることを望んでいるだけで、特別な優遇なんて求めてない。
「優しくしてくれてありがとう!そのままがいいから多少権利侵害されてもいいです!」なんてなるはずないのに。
いいな。私もそんな風に、特権を持っていることにすら無自覚に生きてみたかった。
あーあ、めちゃくちゃでかくて強くて、でも知能は人間と同程度の宇宙人が突然侵略してこないかな。
そうでもしないとわからないのだろうから。
そもそも人に優劣をつけ見下すこと自体愚かしいけれど、そこを除いても同じ大学に入学・卒業した先輩に見下される謂れもない。
努力して同じ土俵に立ったつもりだった。それでもこんな屈辱的な言葉をぶつけられるんだ。
(もうほぼ悪口だけど、こういう場面に遭遇するたび、こんなに見識狭いって大学行った意味あるんか、とまで私は思っている。社会的弱者の視線に寄り添えないなら、金も学歴もゴミに等しい。)
とても悔しくて、かつ動揺で論理的に反論できなかった自責もあり、2日間の休み中寝込んでしまった。
それでも、どれだけ寝ても気持ちが晴れない。
こんなときは特別なヤンチャをせねばならん。
ということで深夜1:00にラーメンを食べることにした。
私はラーメンがあまり好きではないのだけれど、チャルメラの宮崎辛麺とサッポロ一番塩ラーメンだけは例外的に大好きなのだ。
この2種類は身体に悪いとわかっていても、スープまですべて飲み干してしまうほど溺愛している。
ストックしていると食べ過ぎてしまうので、あまり買わないようにしているくらい。
チャルメラの宮崎辛麺に、玉ねぎ、シャウエッセン、ニンニクと卵を入れて食べるのが大好きだ。
お鍋に水を入れ、スープの素を加える。あまり溶けないので適当に箸で混ぜる。
そこに玉ねぎとシャウエッセンを入れて、フタをして火をつける。
3分ほど経ったら麺をいれてさらに3分加熱する。
最後にすりおろしたニンニクと溶き卵を入れて、火を止めて、器に盛る。
1口スープを飲む。辛いけれどしっかり旨味がある。
ニンニクが加わることで、より香り豊かになり、パンチが増している。
ついでに明日仕事なのに、という背徳感も増す。
なけなしの良心で玉ねぎを食べる。せめてものベジファーストだ。
食感が程よく残っていて、甘い。
辛いスープとふわふわの卵が良く絡んだ縮れ麺をすする。
ホタテだしが効いていて、麺自体が美味しいのがこのラーメンのラブリーポイントだ。
肉汁でパツンパツンになっているシャウエッセンをボリッと齧る。
代わる代わる食感と五味を楽しみながら食べ進めると、特別な夜を感じられる。
外で雨など降っていると尚良い。BGM代わりとなって孤独感を紛らわしてくれる。
袋に激辛とは書いているけれど、食べ慣れていていつもは涙なんて出ない。
なのに昨日はなんだかやたらと涙が出た。
九州生まれの辛いラーメンに、九州絡みの辛い思い出を溶かし込んで完食した。
幾分スッキリして、そのあと寝た。
布団の中で、「ダイエット中だったのに」と先輩への恨み言をつぶやいた。